この間、実家に帰った時に中学生時代に集めた、ニコンのカタログ類を持ってて帰ってきました。当時の書き込みなんかがしてありなかなか懐かしい気分です。ざっと見てみると、1985年前後の物が多いですね。新宿の中古カメラ市場では、ものによっては一部1000円前後で売られていました。ちょっと驚きです。
デジカメが手に入ったら写真入りでコレクションを徐々に紹介して行きたいと思います。
今回はパート1ということで画像はないですが、1985年頃に配布された「Through The Lens 湾岸線。05:06a.m.」という宣伝用パンフレットを紹介します。ニコンファンでも、これを持っている人は少ないのではないでしょうか。ニコンがある風景を描いたちょっとしたキザなストーリー(山川健一風)と写真(FE2+MD12+24mmF3.5)が添えられています。このパンフを読んだ僕は、異常に購買意欲がそそられました。
以下に全文掲載します。(著作権問題あったら連絡ください。)
1(Prologue)
10年前の秋、一人の友人とツーリングにでかけた。トランジスタラジオから「タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン」が流れていた
16歳の頃は、オートバイに夢中だった。とにかくオートバイが好きでたまらなかった。エンジンオイルの匂い・エキゾースト・ノート。風切り音。一瞬のうちに後ろへ吹き飛んでいく風景。それらのすべてが、刺激的だった。10月の下旬か、11月の上旬だったと思う。一人の友人とツーリングにでかけた。風はも十分に冷たかった。
一日中走り、小さな町の食堂で遅い夕食をとった。それから、寝場所を探すために、また少しオートバイを走らせた。
町のはずれに適当な空き地を見つけるとエンジンを切り、ラジウスで湯を沸かしてインスタント・コーヒーを飲んだ。体が温まってくるのがわかる。コーヒーを飲み終えると、彼は早々とシュラフにもぐりこみ「おやすみ」といった。
翌朝、寒さで目覚めると、東の空がみたこともないブルーに輝いている。友人は、すでに起き出していた。二人とも黙ったまま、明けていく空を眺め続けた。つけっ放しのトランジスタラジオからローリング・ストーンズの「タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン」が流れてきた。高校を卒業して以来、彼とは会っていない。年に一度、「ハッピー・バースディ・トゥ・ユー」と書かれたカードが送られてくるだけだ。今年のカードは4日遅れて届き、カメラの方はあいかわらずかい?とメッセージされていた。
2
夜中だというのに、その店は真昼のように明るかった。コーヒーを2杯飲んだ。
「うまいコーヒーが飲みたい」
まっすぐにのびた道路の彼方に、小さく明かりが見えた。アクセルを踏みこむと、明かりはどんどん大きくなってくる。深夜3時に開いている店といったら、スナックかトラック食堂に決まっている。しかし、フロントガラスの向こうに見えているのは、そのどちらでもない。コーヒー・ショップだ。
ウインカーをだし、パーキング・エリアにクルマを入れる。ランド・クルーザーは、停止線ぴったりに止まった。
キーをゆっくりと抜き、助手席に積み込んであったギャゼット・バッグを持って店のドアを押す。白いドアは、心地よい重さを掌に残して、音もなく開いた。
店は真昼のように明るく、客はほとんどいない。暇をもてあましたウェイターが調理場の男と冗談を飛ばしあっていた。
ふり向いたウェイターに「とびきり熱いコーヒー」を頼み、窓際のテーブルまでゆっくりと歩いた。時間をかけてそのコーヒーを飲み、三本目のタバコに火をつけた。それからもう一杯、エスプレッソを追加した。
苦みが体中に広がり、眠けがふっとんだ。
クルマに戻り、FE2に24ミリとモータードライブを装着した。3
湾岸線、05:06am。青白い閃光が走り、空気が微かに震えた。
五分後には、空はもう明るい。首都高速に乗った。
なだらかなスロープが続き、水銀灯が後ろへすっ飛んでいく。アスファルトが黒く光っている。100キロちょうどで走り続けた。
首都高速・湾岸道路は、塩浜インターの先で大きくカーブを描く。向こうに見えるのは、空だけだ。アラームが鳴る。五時だ。
後続車がないことを確認してからクラッチを切り、三速までシフト・ダウンした。目的地まで、あと三キロ。メーターの針は40キロ前後で揺れている。スピードをキープしたままクルマを流す。サイド・ミラーの中で、空は夜明けを待ちつづけている。カーブが見え始めた。さらに、二速までシフト・ダウンした。時計の赤いデジタル表示が、05:05から05:06へ変わった。
その瞬間だ。
地平線が光った。青白い閃光が走り、空気が微かに震えた。雲が柔らかく荒れているのがわかる。透きとおった青が広がる。
夜明けだ。湾岸道路の夜明けだ。バック・ミラーに目を移す。後続車は、ない。ウインドウから右手を出し、ノー・ファインダーでシャッターを切った。1/4秒のスロー・シャッター、絞りは開放にしてある。冷たい空気の中で、モーター・ドライブが乾いた音をたてた。
空は、いつか写真集で見た太平洋のように青い。どこまでも澄みきって、すべてのものを包みこんでしまうかのようなブルーだ。あの朝と同じ、優しいブルーだ。カー・ラジオから流れていたロックン・ロールがやみ、空が明るくなった。
4(Epilogue)
まるで夕焼けのように見える朝の景色を一羽の鳥が横切っていった。風が吹いた。
湾岸線を降りて、空き地にクルマを止めた。
タバコを喫おうとしてマッチを擦ったが、風が吹いてきて火をかき消した。空を見上げると、オレンジ色に燃える太陽があった。
300ミリを装着し、ファインダーを覗いた。まるで夕焼けのように見える朝の景色の中を一羽の鳥がゆっくりと横ぎっていった。
まずf/8で撮り、コントラストをあげるためさらに一段半絞ってシャッターを切った。
カメラを手にした瞬間からすべての物が被写体になるという、いい例だ。
写真を絵葉書にして友人に送ったが、返事はまだない。来年の誕生日だろうか。