monochrome三昧

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モノクロフィルムの現像はだれでも手順通りに行えば比較的容易にできます.気になるコストについては,初期投資額として最低限の用具をそろえるのに1万5千円くらいでしょうか.ランニングコストは薬品代になるわけですが,継続的に行う場合はそれほど気になるものではないです.ただし,半年くらい間をおいてしまうと薬品類を新調する必要がでてくる場合があるので少々コストがかさみます.これらのコストを高いと考えるか安いと考えるかは人それぞれだとは思いますが,少なくとも僕は出来るだけローコストに写真を楽しむための一手段として自家現像を行っています.

詳細なやり方自体は専門書に書かれていますのでそちらに譲りますが,ここでは僕のこれまでの試行錯誤の過程をふまえつつ,「平均的なサラリーマンが現像を行うとこんな風にやることになるんだ」というモデルケースというかスタイルを示すことが目的です.


Index

愛用の古いトライX
  1. 最低限必要なもの
  2. 場所の確保
  3. 現像タンクにフィルムをセットする
  4. 現像液の準備
  5. 希釈現像について
  6. 現像
  7. 停止
  8. 定着
  9. 水洗促進液に浸す
  10. 水洗
  11. 水滴防止剤に浸す
  12. 乾燥
  13. フィルムのカットと収納
  14. 参考文献

1. 最低限必要なもの

現像を始めるに当たって必要最低限揃えておかなければならないと考えているものをあげてみます.参考価格(実勢価格かな)を載せておきました.これはヨドバシカメラのネット販売の価格を参考にしています.都市圏に住んでいる方は直接店にいって購入することも出来ますが,そういうケースはまれで,普通の街にはこんなマニアックなもの売ってないと思います.そんなときにはこういったネット通販を利用するのが良いのではないでしょうか.

2. 場所の確保

自家現像をしていると言うと,よく「暗室あるんですか?」と聞かれます.現像に限っていえば,専用の暗室は全く必要ありません.フィルムの装填はダークバッグ(とかチェンジバッグとか言う)という黒い袋の中行います.フィルムをリールに巻き付けて現像タンクに装填してしまえばあとは明室での処理となります.だからどこでやるべきかといえば,お湯と水があって程度換気ができるところとなります.僕の場合は多くの人がそうしているように,浴室(ユニットバス)で行います.別に台所でもできないことはありませんが,現像液や酢酸はニオイが強いので家人の反発が予想されます.

浴室現像所
[浴室現像所]
こんな風にしてユニットバスで現像をしています.後かたづけは水でさっと流すだけですし,水温の調整もお湯を張ったタライにつければOKです.

3. 現像タンクにフィルムをセットする

下準備としてフィルムを現像タンクにセットするわけですが,この作業がフィルムの現像をする上で一番慣れを要する作業です.慣れといっても一生かけて極めるようなものでなく,フィルム10本くらいやれば慣れます.

まず,ダークバックの中へ現像するフィルムと現像タンク,栓抜きとはさみ,を入れます.ダークバッグの中に手をつっこんで,以下の作業を行います.

ダークバッグの中身
[ダークバッグの中身]
ダークバックの中には,現像タンク(2本用),リール2個,栓抜き,ハサミ,フィルム2本を入れます.

4. 現像液の準備

現像液を準備します.現像液には粉末を水に溶かして使う「粉末タイプ」と,液体を薄めて使う「液体タイプ」ものの2種類あります.

種類はいろいろとありますが,入手しやすいものとしては,国産だとフジフィルムのミクロファインや増感特性に優れたスーパープロドール(SPD).これはどちらも粉末タイプ.舶来ものとしてはコダックのT-MAXディベロッパー(液体タイプ)や,標準現像液として名高いD-76(粉末タイプ)といったところでしょうか.また,現像液は薬品の処方の仕方によって無数の組み合わせがあります.コアな人は自分専用の現像液を処方しているようです.

僕は,コダックのT-MAXディベロッパーを愛用しています.液体タイプはやはり簡便で重宝しています.

現像液のメーカーとフィルムのメーカーに関係はないです.厳密にみれば相性のようなものがあるのかもしれませんが,コダックの現像液でフジのフィルムを現像することもできますし,その逆も可能です.出来上がりに差はあるかもしれませんがこれは好みの問題ということになります.

前置きが長くなりましたが,準備としては,

薬品あれこれ
[薬品あれこれ]
これがフィルム現像で使用する薬品類です.左から現像液,停止液,定着液,水滴防止液,これらの薬品を適切な量の水で薄めます.

5. 希釈現像について

現像液を通常の濃度より薄めて現像を行うことを希釈現像といいます.うすめ方はいろいろあるのですが,ポピュラーなのは倍に薄める1:1希釈です.

現像液は繰り返し利用が可能です.そのかわり一回現像するたびに現像能力が落ちます.そのため2本目以降は現像時間をのばす必要があるのですがこれが難しい.どの程度落ちているのか指標がありませんのでどの程度時間を多めにするかが読めません.そのためばらつきが発生します.

現像液はそれほど高いものではないので一回毎に新調するのも一つの方法ですが希釈して現像液を倍にして毎回新しいものを使い捨てにすることによって経済性を重視しつつ現像液の能力を揃えることができます.

もう一つのメリットは希釈するということは現像能力を落とすことになるので現像時間を倍程度にのばす必要があります.これは反応が緩やかになることを意味していて現像時間のコントロールが容易になります.

出来上がりについては,差はあるように思います.気分の問題かもしれませんが,希釈現像した方が階調が豊かで少々コントラストが低いネガに仕上がるようです.

6. 現像

メインイベントの現像を始めます.現像液を現像タンクに注いで攪拌しながら規定の現像時間までそれを続けます.

現像時間というのか15秒単位くらいで厳密に決められているので,現像液を注ぎ始めてから時間を計るのか,それとも完全に注ぎ終わってから時間を計るかで15秒くらいの差が生じることになります.どちらがいいのかは人によりそれぞれのようです.個人的にはどちらでもあまり大差はないような気がしていますのでそれほどこだわってはいません.

現像液の注入が完了したら,最初の攪拌を開始します.最初の一分くらいは連続的に強めに攪拌を行います.これはフィルムと現像液をなじませるために行います.またフィルム表面の気泡を取り除く目的もあります.このときの強めの度合いも人それぞれのようでして,かなり激しく行う人もいれば,そうでもない人もいるようです.僕の経験からするとここの加減でわりと出来上がり(ネガの濃度)が変わってくるように感じています.どちらかというと軟調のネガが好みなのでそれほど激しくは行わないようにしています.またここでうまく現像液が回らないと現像ムラの原因となります.

この攪拌が終わったら,30秒ごとに5秒程度の割合で”軽く”規定時間になるまで攪拌を続けます.ここでも人それぞれやり方は違うようで1分ごとにやる人もいるようです.仕上がりとご相談ということになります.なかなか奥が深いです.液の排出はだいたい規定時間の15秒前から開始して停止液を入れ始めるくらいでちょうど規定時間になるようにしています.

現像時間はモノクロフィルムや現像液に記載されている時間が基準になりますが,あれはかなりマージンが含まれていて「現像が絶対に失敗しない」ような時間がかかれているような気がします.これを守るとかなり濃いめのネガに仕上がるような気がします.よって僕は気持ち現像時間を短め(15秒から30秒)にします.

7. 停止

停止液を使用して現像の進行を完全に止めます.停止液には酢酸の3%水溶液を使用します.または水を注入するだけということもあるようです.これもどちらでもいいのですが,きっちり酢酸を使用して停止した方がうまくいくような気がしています.時間についてはラフでいいと思います.ジャーっと注いで何度か振ってから捨てます.液は使い捨てです.

8. 定着

定着液を用意しておきます.定着液もいろいろあるのですが現像液ほどシビアなものではないと思っているので詳しくは書きません.僕は液体タイプのコダフィックス ソリューションを使用しています.

現像は時間が厳密に規定されているのですが,定着については割とラフでもいいようです.僕もわりと気分によって10分することもあれば5分程度で終わりにしてしまうこともあります.最近は間をとって7分間にしています.定着は手を抜くとフィルムの保存性に影響がでますのであまり手を抜きすぎるのもどうかとは思いますが.定着液は繰り返し利用が可能です.定着が終わったらポリタンクに戻します.

9. 水洗促進液に浸す

定着が終わったら水洗です.軽く真水で洗い流したらその後で水洗促進液に浸します.ここからは明室での処理が可能になりますので,タンクから取り出してリールごと浸します.定着液はなかなか落ちづらいので水洗時間は30分程度必要になるのですがこれを短縮するために行います.ここで30秒ほどの処理すると水洗時間を10分程度に大幅に短縮できますし,水道代の節約にもなります.フジフィルムのQW(クイックウェル)を使用しています.これは薬剤を溶かして一度にできる量が2リットルですので2リットル用のポリタンクに保存して繰り返し使用しています.

10. 水洗

水をじゃーっとかけておきます.僕の場合は10分間です.

11. 水滴防止剤に浸す

界面活性剤が入っていて,フィルム表面に水滴がついて乾燥したときに跡が残るのを防止してくれます. フジフィルムのドライウェルを使用しています.これも繰り返し利用が可能です.

12. 乾燥

乾燥します.フィルムの両端におもり付きのクリップを取り付けて2mほどの高さからつり下げます.つり下げたら,水に濡らした2個のスポンジでフィルムを挟んで表面の水を一回だけ上から下へふき取ります.フィルムに傷がつく可能性があるのでこれをやらない方がいいという人もいます.乾燥時間は一晩くらいが無難ではないでしょうか.僕はそうしています.

乾燥の風景
[乾燥の風景]
36枚撮りのフィルムは全長が180cmくらいあるので,天井近くにつっかえ棒をして乾燥してます.

僕の場合,乾燥後のフィルムのカール(長さ方向)がひどくていろいろ悩んだことがありました.いろいろと原因を探ったのですがこれは乾燥の方法にあるのではなくて,期限切れ後かなり年数のたったフィルムを使っていること起因していることがわかりました.当たり前といえば当たり前であの状態でずーっと保存されているわけですから巻き癖がついてしまうようです.対策としては,

完全になくなるまでは待てないのでそれほどひどくない場合は現像後すぐに無理矢理フィルムスキャナで取り込んでしまいます.

13. フィルムのカットと収納

フィルムを6コマずつに切ってネガシートに入れていきます.ふつうはフィルムの最後のコマから6コずつカットします.カメラによってコマ間寸法のばらつきの違いがあっておもしろいです.良いカメラはきっちりと揃っています.これで作業は完了です.

参考文献

14. 参考文献

ざーっと,流れを説明しました.一応,ここを読むだけで一通り現像が出来るように書いたつもりです.わかりづらいところ等があればご指摘ください.また,もっと詳細な説明が欲しかったり,プリントまでやることを考えている人には以下の書籍が参考になるのではないかと思います.

シリーズ 日本カメラ No.112 モノクロ写真の現像とプリント

いろいろとモノクロ現像の本は出版されていますが,この本が決定版だと思います.他はいりません.ただし,この本はあくまでも教科書であってこれがすべて正しいわけではありません.過度に厳密なところがあって,そこまでしなくてもいいだろうだとか,こんなもの使うと逆に不便なんじゃないかとかツッコミどころは満載だったりします.たまに読み返してみてラフにやってる自分への戒めにするにはちょうど良い本です.